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舞-HiMEの静なつ奈緒のSSを書こうと思っています。 キャラ崩壊酷いと思うので、大丈夫な方だけどうぞ。

俗・わうわうなっちゃん

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俗・わうわうなっちゃん

書いてる途中のモノがたくさんあると混乱するので、とりあえず終わらせとくかという
ノリで書いた続きです(百合豚は脳のキャパがちょっとアレなんです)。
前回の続きです。これにて完結です。






「はい、あーん」
「あう」

私は感激に打ち震えていた。
何故かというと、あの照れ屋のなつきが素直にあーんとしたものを口に含んでくれるからである。
この際中身が犬だとかそういうことは関係ない。

というより、動物にだって感情はある。
もし私がなつきに嫌われていれば、きっと彼女は部屋の隅っこでずっと唸っていただろう。
下手したらおしっこをかけられていたかもしれない。
つまりこの素直に私に甘えている姿は、ある意味でなつきの本心ということ。

「なつき、うちのこと好き?」
「あん!」

元気よく答えてくれたなつきを撫で回す。
こんな私にとって都合のいい存在がいていいのだろうか。
少しばかり罪過ぎやしないだろうか。
そんなことを考えていると、突然手を引かれた。

「?」
「……」

なつきは何も言わない。
ただ私の手を引き、立たせようとしている。
確かに、今しがたなつきの口に放り込んだのが最後の一口だった。
普段なら食事のあとはすぐに食器を片して、お茶を淹れている。

しかし落ち着きのないなつき犬はそれを許してはくれなさそうだ。
私は黙って立ち上がり、彼女に従うことにした。
食器の片付けや食後の一服よりもそちらの方が重要だと判断したのだ。

「がぁ」
「…!」

今のはズルい。”がぁ”はズルい。
犬だと思っていたけど、狼のような要素も入っているのだろうか。
なつきのチャイルドであったデュランは、狼だった。
もしかしたらなつきはデュランのような犬を演じているのかもしれない。

「……」
「ぁぅ」

この見た目で?
だとしたら可愛過ぎる。

なつきは私をソファの前まで連行すると座らせたいのか、
肩の上に手を置いて床に押し付けるように力を入れた。
どこか焦っているような苛立っているような、そんな様子だった。
私をソファに一刻も早く座らせなければいけない理由が彼女にはあるらしい。

「痛い痛い、痛いどすえ。そないにせんでも言うてくれれば座りますさかい」
「ぁぅ!がぅ!」
「きゃあ!」

私の言葉を聞いたなつきは一瞬考えてから、「そんなもの知るか」と言うように上に乗ってきた。
そういえば先ほどは床に押し倒されて上に乗られた。
なんだろう、上に乗るのが好きなのだろうか。

私の上に跨がっているので、なつきの方が目線が高い。
満足げに見下ろしてくるなつきにいたずらしたい欲求が急激に跳ね上がったがなんとか堪えた。

彼女はこうして私の膝の上に跨がるように座りたかっただけなのだろうか。
そしてただそれだけのためにあんなに焦っていたのだろうか。
何故いまの状況で鼻血が出ないのか、自分の体が逆に不思議だった。

「がう!」
「ええよ。好きなだけ乗らはって。でも手は離してくれへん?」

このままじゃハグできへんやろ?
言葉を続けようとしたけれどもそれは叶わなかった。
何故かというと、彼女が私の手を引いて自身の体、ちょうど腹の辺りに押し付けたからだ。

「な、なん…?撫でろ言うの?」
「ぁぅ。わぅ」

私の言葉など耳に入っていないというように彼女は私の手を手動で動かす。
腹を撫でろというので間違いなさそうだ。
私は彼女の意志に従い、腹をわさわさと撫でた。
嬉しそうに目を大なり小なり(><)にして喜んでいる。

さらに今度は姿勢を低くして、私の手の下に頭を入れようとしていた。
どうやら頭を撫でてもらいたいようだ。
今日のなつきは本当に、ある意味私を殺しにかかっている。
私の中で大胆な勝負師達が山崩しをして遊んでいるかのように
理性ががんがん削られていく。

「なつき、なんなん?誘ってはるの?」
「ぅ?」
「ぅ?やあらへん。なんやの」

これでキスは出来ないのだからもはや拷問だ。
少し触るくらいなら許されるはずだと悪い虫が騒ぎ出す。
ものは試しだと、その欲求のまま服の中に手を滑りこませてみた。

「わう?」
「なんもあらへん、気にせんといて?」

成功した。ガードは緩いようだ。
元々私の手を引いて触らせるくらいだ、きっと基本的にウェルカムモードなんだろう。
勢いが消えてしまわない内に、さらに胸を軽く触ってみる。
しかし直後に頭頂部が鈍痛に見舞われた。

「わうー!」
「たっ!?」

これはダメらしい。
なつきの見事な手刀が振り上げられる。

「もー、なんやの?生殺しどすえ」
「あう!あう!あう!」
「なつった、ちょっとった、待っとくれやすった」

鳴き声(?)に合わせて何度もぺちぺちと額を叩かれる。
あまり痛くはないが精神的に辛い。

「なつき、オイタしたらあかんて」
「がうー!」

素肌は触らせておいて胸は駄目、と。
どういう線引きなのかはわからないが、とりあえずは承知した。
もしかしたら”今は腹を撫でることに集中しろ”ということかもしれない。
まずはご機嫌取りとばかり再度腹に手を伸ばす。

「ほぉら、お腹撫でましょなー」
「わぁふわぁふ」

なつきは私に乗ったまま満足そうにしている。
いつまで撫でればいいんだろうと考えていたら、
なつきはごろんとソファの狭いスペースに背中をついた。

上に乗られるのも悪くなかっただけに少しだけ残念だが、この体勢はこの体勢でなかなかクる。
犬が腹を見せて服従を表現するときのポーズそのものだ。

「な、なん……?もっと撫でて欲しいんやろか」
「……」

なつきは私を黙って見つめている。
恐る恐る手を伸ばして服の上から腹を撫でると、嬉しそうにこちらに腕を伸ばしてきた。
上半身を少し寄せてみると下から抱きすくめられる。

何度も言うが、これほど積極的ななつきは滅多に見れない。
自惚れではなく、相思相愛なのだと胸を張って言うことはできるが、
今までこんなに素直に求められたことはなかった。
そんな自分がいきなりこんな目に合って冷静でいられる訳がない。

「なつき…うち……」
「ぅ?」

もういっそのこと、キス無しで徹底的にいじめてしまおうか。
なつきの目を見つめながらそんなことを考えていると、彼女の顔が近づいてきた。

「へ?」
「わう」
「ちょお…!」

自分らの顔の距離をゼロにしてからすぐに顔を離される。
キス、された。
こんな唐突に夢のような時間が終わってしまうなんて……

「もふ」
「……えっ」

と思ったが、催眠術は解けていないようだ。
普段の彼女からは絶対に想像出来ない、だらしない笑顔がそれを物語っている。
極め付けがもふという鳴き声。間違いない。

「まさか、”うちから”キスしてへんから……?セーフやの……?」
「わんわんわうわう」
「ちょおなつき静かにしぃよ」
「あうあうわんわん」
「こぉら」

したい。……………したい。
何をだなんて聞かれたら困る。
直接的な表現はあまり好まないので野暮は黙っていて欲しい。
こんなことされたらもう止まれない。

「っと、あかんあかん……」

いけない。
いくら可愛いからと言ってなつき本人の意識がないときにするのは反則だ。
食事の後片付けでもしながら頭を冷やそう。
待っとってなと言い残し、食器を片しに立ち上がった。

なつきの(主に撫でろという)欲求を満たした状態なら他の部分に触れることもきっと問題無い。
そうじゃなかったとしても、多少強引に刺激を与えればこっちのものだろう。
今のなつきは色んな意味で素直だろうから。

やってしまえ。
いや待て、それはよくない。
そんな葛藤を繰り返しながら手を動かす。

なつきはというと食器を持って歩く私の後ろを、お皿一枚だけ持ってついてきていた。
すごい誇らし気にしている。きっと大層役に立っているつもりなのだろう。

「ええこやね」
「あぉん!」

可愛い。本日何度この言葉を言ったがわからないが、本当に可愛い。
動き回る私の後ろをつけて、たまに腰に抱き着いてきたりするその様は本当に天使のようだ。
しかし私はいま己の煩悩と戦っている、いや、相談している最中なのだ。
あまり意識がぐっと偏るようなことはして欲しくない。

なつきにこんな風に構ってもらえて素直に喜べない日がくるだなんて。
人生とはわからないものである。
しかし今は近づける訳にはいかない。

「なつき、ちょおあっちで待っときよし」
「ぁぅ……………………」

洗い物をしながらそう冷たく言い放つと、とても寂し気な声が聞こえた。
しかし横を見ても彼女の姿はない。

「?」

いた。
彼女は私の足元で目を潤ませながら体育座りをしていた。
全身からしょんぼりとしたオーラが伝わってくる。
あっちに行ってろと言われたのが余程ショックだったのだろう。

「わう………わうぅ…………」
「あっ…」

遂に彼女の頬から一筋の涙がこぼれる。
泣かせてしまった。
こんなにも可愛いなつきを。私が。泣かせてしまった。
ちょうど洗っていた包丁で手首を切りつけたくなる衝動をなんとか抑える。

しかし、そうこうしている間に健気な彼女はなんとか私の言いつけを守ろうとしていた。
のそりと体を捻り、四足歩行のままキッチンから離れようと一歩踏み出す。
そんな後ろ姿を見せられて誰が彼女を放っておけよう。
それができるならその人はもう人じゃない。

「なつき!待っとくれやす!」
「……ぅ?」

四足歩行のまま振り返る彼女は泣いていた。
先ほどの比ではない。
ぽろぽろと大粒の涙を流しながら彼女は私を見たのだ。

「う、うちがいけず言いましたわ……堪忍な……」
「ぁぅ……」

言いながら私は屈んで両手を広げた。
すると戸惑いながらも、なつきは私の腕の中に収まった。

頬に冷たい何かが当たる、おそらくなつきの涙だろう。
理性を働かせる為とはいえ、なんて酷いことを言ってしまったんだろう。
なつきを抱き締めたまま彼女の方を見ると、柔らかい感触が唇をかすめた。

「なつき、堪忍、堪忍な……」
「静留……?」
「」

突然名前を呼ばれて言葉にならなかった。
完全に私の中の時が止まった。
しかし無常にもなつきは言葉を続ける。

「なん……で、私は泣いているんだ……?」
「………」

いやいや今のはノーカンやろ。
当たり判定どないなっとるん。
おかしいやん。
さっきなつきからしてきはったときはあないにハッキリやっても平気やったんに
なしてうちがちょお顔動かした拍子にかすったソレがカウントされるん、理不尽やん。

「………こ、怖い夢でも見たんと違います?」
「と、言うと思ったか?」
「えーーーーーーーーーー……………と?」

こういうときは下手なことを言わずにとりあえず笑顔でいること。
生徒会長として名を馳せた私が言うんだから間違いない。
ホント、こういう時は笑顔でいれば大概乗り切れるから。
ほんまほんま。

「催眠術の件、わかってるんだからな」
「え」
「記憶、全部残ってるから」
「……」

本日、笑顔の定休日。
私は完全に沈黙した。


夏の真ん中。
私は正座で沈みゆく夕陽を眺め、
蝉の鳴き声をBGMにしてなつきの説教を受けた。



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自己紹介:
そこら辺に転がってる百合豚です。

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