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舞-HiMEの静なつ奈緒のSSを書こうと思っています。 キャラ崩壊酷いと思うので、大丈夫な方だけどうぞ。

8.

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8.

バンドパロです。
音楽の話をあまりしていない…………???????なんの話ですか………?????????








退屈な授業が終業のベルと同時に過ぎ去った。
あと五分もすれば帰りのSHR(ショートホームルーム)が始まり十分後には解散だろう。

席替えで窓際を引き当てた命の強運が少しだけ恨めしい。
教室の後ろ側、窓際の特等席。
もしあの席にあたしが座っていたら、自由になるまでの凡そ十分の時間を
睡眠によって早巻きしていたっていうのに。

何が悲しくて教室のど真ん中に椅子と机を置いて座ってるんだか。
昨日の席替えでこの席になってから散々だ。
まず、授業中に当てられる確率が上がった。気のせいなんかじゃない。絶対上がった。
休み時間になると両脇を通り抜けるクラスメート達だって、はっきり言って鬱陶しい。

ガラガラと引戸が開く音がする。
担任が書類を小脇に抱えながら教壇についた。
やっとSHRが始まるようだ。
時計をちらりと見やると、概ね想定内の時刻。
特に予定はないけど、時間が無駄に消費されていくのは好きじゃない。

日直がダルそうに号令をかけて着席する。
簡単な連絡事項を告げたあと、担任は先ほど抱えてきたプリントを配り始めた。
それは学園祭の保護者向け告知プリント。
毎年やってることなんだからわからない訳ないでしょと言いたいところだけど我慢。
貴重な資源がこうやって食いつぶされていくのかなんて柄にもないことを考えてみる。

配り始めてすぐに担任は固まった。
印刷部数を間違えたそうだ。

笑いが起こり、教師が小走りで教室を出て行った。
足りない分を持ってくるつもりだろう。
しばしの間、教室内は中休みのような空気になる。
小さな喧騒の中、隣のクラスの椅子を引く音が聞こえた。
どうやら隣のクラスはホームルームが終わったようだ。

あたし達だってこんなアクシデントさえなければとっくに帰ってたっての。
振り返って命を見ると机に突っ伏して見事に寝落ちていた。

頬杖をついてやや離れた窓の外を眺める。
さっきも言ったように予定はない。
しかし、だからこそ早めに帰りたかった。
今のあたしは、街で男達を誑かしていた頃とは比べ物にならないくらい充実した毎日を送っている。
ただ、少し充実し過ぎである。というよりも、内容やメンツが濃過ぎるのだ。
年寄り臭いと言われても構わない、とにかく今日は真っ直ぐ寮に戻って休みたかった。

外がやけに騒がしい。
主にキャーと焼き増ししたような声が幾重にもなって耳に届く。
あたしはと言うと、開け放たれた窓から運ばれる風が、そのまま廊下に抜けて
黒板に貼付けてあるプリントをまくっていく様子をぼんやり眺めていた。

だってもう嫌な予感しかしない。
この席になってから嫌なことしか起こらない。
きっとここはフースイ的に良くないのだろう。
なんとかコパが見たら真っ青になるに違いない。

教室の後ろの引戸が勢い良く開く音が聞こえた。
まさか後ろから教室に入るとは。
うちの担任ときたら、相当慌てていたらしい。
しかし直後、教室に響いた声であたしは固まる。

「奈緒ー…って、あんなところに!席替えしたのか?」
「……。」
「奈緒はん。あんな、今日よかったらうちらと」
「……って」
「は?なんだ?聞こえん、もう一回言ってくれ」
「出てって」

ズカズカと歩きながら喋っているのか、声がどんどん近くなっていく。
覚悟を決めたあたしは牽制するように振り返り、玖我を睨みつけた。
やめて、歩み寄らないで。
あたしの隣に立とうとしないで。

「なんだ?機嫌が悪いのか?」
「……。」

まだSHRは終わっていない。
確かに担任が帰ってくるまで、それぞれ席の近い者同士で喋ったりしていた。
しかしほぼ全員が着席した状態だったはず。

どう空気を読み間違えたらこんな無神経に振る舞えるのだ。
後ろの方を見ると、そこには笑顔の藤乃。
そのポジションは何かを彷彿とさせる。
あぁ、わかった、授業参観だ。……許さない。
玖我はともかくとして、藤乃は確信犯だ。

「もしかして、昨日激しくしたから怒ってるのか?」
「あたしが言いたいのはそういうことじゃなくて」

歓声にかき消されていた言葉は途中で切った。
どうせ届かないのに言ったって馬鹿馬鹿しいから。

「いつもより長くてしつこくした自覚はある、すまなか」「それ以上言ったら殺すわよ」

信じられない。
周りが変な目であたし達のことを見ている。
期待するような嫉妬するような、ホント妙な視線。
もちろんこいつの言う”激しくした”というのはスタジオ練習の話に他ならない。
”いつもより長くてしつこくした”というのもスタジオの借りた時間の話だ。
いつもは2時間だったけど昨日はフェア中で安くなっていたので思い切って4時間とったのだ。
だけど周囲にそんな言い訳をいちいちする気にはなれなかった。

教室は静まり返っている。
口を開いているのはあたし達だけ。
人に注目されるのも、本性を意味なくさらけ出すのも好きじゃない。
でももう、黙ってなんていられない。

「ちょっとアンタ!変な言い回ししないでくれる!?」
「は、はぁ?じゃあなんで機嫌悪いんだ」
「HR中に入ってくんな。それだけよ」
「……は?」
「聞こえなかった?HR中って言ってんよ」
「でも、教師が」
「あーもー!プリント取りに行ってるだけだっての!早く出てけ!ラード女!」
「そうだったのか……って、確かにHR中に入ったのは悪いと思うが、ラードは関係ないだろ!」
「ラード女にラード女って言って何が悪いのよ!」
「男とまともに付き合いがない女のことをラードと言うならお前だって最近そうじゃないか!」
「アンタと一緒にすんなっつーの!あたしがラードならアンタはヘドロだから!」
「貴様!」
「何よ!」

気付いたらお互いの胸ぐらを掴み合っていた。
もちろんここで引いたりしない。それはあっちも一緒。
あたしより背の高い玖我はあざ笑うようにあたしを見下す。
負けじと挑発するように視線をぶつけた。

「そこまでどす」

気付くと私達の手を取って、やんわりと掴み合っていた服を離させた。
そこでハッとする。
嫌な予感がする、なんてものじゃない。

周りを見渡すと全クラスメートがあたし達を見ている。
居たたまれなくなって黒板の方に目を逸らすと、教壇で担任が苦笑いをしていた。

「…なんなのよ」
「あ、あの、すまない。それじゃ、私達は一旦外出てるから……」

そそくさと机と机の間を縫うように高等部のアホ二人は退散した。
いつの間にか立ち上がっていたあたしも咳払いをして、何事もなかったかのように席についた。
配布が再開されたプリントの行方を眺める。

ムカつく。信じられない。
学校生活なんて目立たないように尚かつ要領良くやれりゃそれでいいと思っていたのに。
あいつらに関わるといつもこうだった。
目立つし、騒ぐし、巻き込むし。
今日だってこんな面倒を起こして本人達はすたこらさっさだ。

逃げたことは許せない。が、さきほどの玖我の顔を思い出すと少しだけ気が和らいだ。
あたしと同じように頭に血が上って周りが見えていなかったのだろう。
周囲を見渡してうちの担任の姿を確認すると、玖我の顔はみるみる赤くなっていた。
あのスカしたクールビューティー(笑)があそこまで恥をかいたのだ。
このあとに一言謝らせたらそれで手打ちにしよう。
いつまでも根に持っても仕方がない。

普段は話し掛けてこない、昨日からのお隣さんがあたしに言う。
「二人はどんな関係なの?」と。

この手の質問にはうんざりしていた。
あの二人とバンドを組んでいると知られる前、散々された質問だ。
しかし今はそのニュアンスが少し違った。
”二人”はどんな関係なの?という言葉の”二人”とは誰と誰のことを指しているのだろう。
藤乃と玖我か?……いや、流れから考えてあたしと玖我か。

「はぁ……。」

思わず盛大にため息をついてしまう。
許してやろうかと思ったけど、微妙な気持ちになってきた。
何が悲しくてあんな奴とそんな風に勘違いされなければならない。
というか、百歩いや千歩譲ってあたし達がそんな関係だったとしても
あの状況で玖我がそんなこと言ってくるワケないでしょ。藤乃が見てたんだから。

よく考えたら矛盾だらけの質問をしている自覚はおそらくこいつにはない。
何も考えていないのだから当然。
好奇心に食われてる。

その時、日直が号令をかけた。
流されたフリをして椅子を引いて立ち上がる。
身の毛もよだつような質問には答えなくても済みそうだ。
色々突っ込んで聞かれても面倒だし、そもそもあたしはとっとと帰りたいのだ。

そういえばあの二人の用事はなんだったんだろう。
藤乃が何か言いかけていた気がする。
きっとあの扉を開けると二人が待っているんだろう。
急いだ方がいい。ギャラリーは少ない方がいいから。

「お待たせ」
「あぁ。待った」
「あたし悪くないけど」
「なつき、今日のところは謝っとき」
「……」

教室を出た直後の会話がこれだ。
どことなく殺伐としてる。確実にあたしと玖我のせいなんだけど。

「すまなかった。まだホームルーム中だったとは……」
「はぁ…それはさっきも聞いたし言った。あんたのせいで……まぁいいわ」
「ん?なんだ?私のせいで?」
「いいから。で、あんたら何しに来たの?」

あんたらが来るとめちゃくちゃ目立つから止めて欲しいんだけど。
なんとなくその言葉は飲み込んだ。
どうせ言っても意味がないからだ。
そんなこと、この数ヶ月で学習した。
こいつらは性懲りもなく、あたしの元を尋ねる。
人目に晒されるのだって、実を言うと結構慣れた。さっきのは別の意味でしんどかったけど。
何故未だにこんな大袈裟に迷惑そうにしているのか、実を言うと自分でもよくわからない。

「あぁ、前に言ってたアーティストのライブ映像が手に入ったんだ」
「前に言ってたって……あの!?」
「そうだ。奈緒も観たいって言ってたろ?今からうちに来ないか?」
「うーん……」
「なんや予定でもあらはるん?」
「そういうワケじゃないんだけど……今日は久々に何もない日だから帰ってゆっくりしようかって、ちょっと!?」
「そやったらうちでゆっくりすればええね。けってーけってー、きょーせーれんこーどす」

ぐるりと方向転換してから、肩を組むように抱かれた。
藤乃はあたしの体の向きを固定させたまま歩き始める。
後ろで玖我どういう顔をしているのかは知らない。
ただこれを放置ってのはないでしょ。だとしたら酷過ぎる。

「ちょ、離してよ!玖我!見てないでなんとかして!」
「安心しろ。お前の荷物は私が持っててやる。大人しく静留に連行されるんだな」
「な!?こぉんの……!」

藤乃の腕を振りほどこうと足を止めた。
これ以上流されてたまるか。
そうこうしていると視界の端っこに藤乃の顔が近づいて来た。

「奈緒はん、今度はうちとそういう噂たてましょか?」
「?!」

不意を突かれ、そのまま耳元でぼそりとささやかれた。
う、噂って…なんでこいつ、さっきのクラスメートとの会話知ってるのよ……!
返す言葉が見当たらなかったからか、ただ単にビビったのか、とにかく黙った。
あたしからしたらこれはれっきとした誘拐なんだけど、きっと周りはそうは見てくれない。

この二人のせいで目立ったり、玖我との関係を勘違いされたり、藤乃にまで冗談めかして迫られたり。
それもこれも全部あの席替えが悪い。

「ははは。さすがドラムとベース。なんだかんだ仲いいな、二人とも」
「はぁ?」
「そやなぁ」
「あんたも否定しなさいよ!」

ホント、最悪。
二人して笑うなっての。

今日も帰りは遅くなりそうだ。


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