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舞-HiMEの静なつ奈緒のSSを書こうと思っています。 キャラ崩壊酷いと思うので、大丈夫な方だけどうぞ。

3.

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3.

静留出てこないけど、静なつ奈緒の続きです。








ぼんやりと天井を仰いでいるとけたたましい電子音が鳴る。
そんなに大きく設定しなくても聞こえるだろ、と心の中でツッコミながら即座に受話器に手をかけた。

「はい。……あぁ、はい………いいえ、すぐ出ますんで。すみません。」

”休憩時間”が超過しているとのこと。
まさかそんなことで電話を頂戴するとは。
もうしばらくこのホテルは使えないな、恥ずかし過ぎる。
そんなことを考えながら手早く身支度を整えて、テーブルに置かれていた鍵を引っ掴んで廊下に出た。

まぁ、一人なのは気楽かも知れない。そして今日に限っては幸運だった。
フロントに付くまでに三組の客とすれ違ったからだ。
奈緒と二人で歩いていたとしたらジロジロと見られたことであろう。
品定めするような下衆な中年の視線を無視するのはこう見えて結構骨が折れるんだ。
HiMEの力なんてとうの昔に失ったにも関わらず、無茶が体に染み着いてしまっている。
傍から見たら危なっかしい人間だろうな、私は。

「はい、ありがとうございました。」

フロントが言い終わると同時に動き始めた自動ドアの扉を通過してスマホを取り出す。
18時。なるほど。

ここから駅まで10分、電車で移動してそこからまた歩いて。
おそらく19時には家に着く。丁度いい頃だろう。
奈緒と会う時はもちろんのこと、私は普段からこのペースを乱さないようにした。
極端に遅くなったり早くに帰宅すれば理由を問われる確率が上がるからだ。
私は嘘がヘタクソだ。

「はぁ………。」

今日も無邪気な静留の振る舞いに胸を痛めなければならないのか、と
お前は一体何様なんだと問われても仕方がないようなため息をつく。
そうだ、私は矛盾している。きっとどこかおかしいんだ。
昔は確かこんな人間ではなかった。
特に人を裏切る類いの嘘なんてつけない人間だったように思う。
それがこの様なんだから、とんだ笑い話だ。

一体どこで歯車が狂った?
幾度となく繰り返す自問自答の行き着く先はいつも同じだ。
考えながらもどうせまともな解決策なんて見いだせないとハナから諦めてるんだから救えない。

高校2年生のある日、静留と付き合うことになった。
正直、あのときは静留の気持ちに応えられるか、という不安の方が大きかった。
高校3年生のある日、それまでずっとされるのみだった私が初めて”そういう意味”を持って静留に触れた。
静留に何か返せるなら嬉しいと、純粋にそう思っていた。

そして大学生になって、風華に合格していた私は、再び静留と同じところに通えるようになった。
全てが上手く回っている、少なくとも静留はそう思っていたはずだ。
だけど私は違った。いや、断言はできないけど、それでもきっと何処かでそれを求め始めていた。


あの日。そう、あの日。

私が欲求に流されてなければ。
奈緒が私を部屋に誘ったりしなければ。
偶然奈緒と会わなければ。
体が濡れたりしなければ。
きちんと天気予報を見てさえいれば。

あの日、雨さえ降らなければ。

きっと間違いは起こらなかった。
先延ばしになっただけかもしれないが、それでもとにかくあの日は回避できた。

こうやって精一杯、あの日の過ちを、いや、あの日から今も尚続いていて、そして終わる兆しの見えない過ちを雨のせいにしている。
わかっている。私は、静留を裏切ってしまったという事実から逃げようとしているだけだって。

どこで歯車が狂ったか、なんて白々しい。まさに愚問だ。
私はきっと、もともと女という生き物と相性良く作られている。
どこで狂ってるというならきっと、最初から狂っていたのだろう。
おそらく私のような人間はゴマンといる筈だ。
ただその大半がそんな自分に気付く事無く男と結ばれ生を繋ぐ役割を全うしていく。
私には静留がいた、違いはそれだけだ。

静留にも責任があるなんて言うつもりは微塵もない。
ただ、静留がいなければ、女にこういう興味を抱くことはなかった、とは思う。
そして抱いた結果がこれだ。
その好奇心は私を裏切り者へと変えてしまった。
いや、好奇心が私を裏切り者だと暴いたんだ。

去年、私は嘘は苦手だと言っていた気がする。
二年前の私なら、きっと……嘘は嫌いだと。
そう言っていた。

−私は嘘がヘタクソだ。

先程のこの言葉が今の私の全てを物語っている。

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