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舞-HiMEの静なつ奈緒のSSを書こうと思っています。 キャラ崩壊酷いと思うので、大丈夫な方だけどうぞ。

12.

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12.

奈緒視点、バンドパロです。
しばらくこの話が続きます。

近日中にもう片方のパロも更新したいと思います。



この二人とつるむようになってからこういうことはままあった。
というかよくあった。
どういうことかと言うとこういうこと。

「というわけで決定やね」
「まぁそこまで言うなら」
「…誰が行くって言ったのよ」
「ほな、今日の七時に駅前で」

お分かりだろうか。
あたしの知らないうちにあたしの予定が決まっている。
まさにホラーだ。
だからあたしはせめてもの抵抗をする。

「誰が駅前まで行くかっての。現地集合で十分でしょ」
「まぁ、奈緒はんならあそこら辺は詳しいやろし。そないに言わはるなら構いませんえ」
「にしても月杜町にそんな場所があったなんてな」
「うちも珠洲城はんに聞いて驚きました」

あたし達は今晩、セッションバーとやらに行くらしい。またの名をライブバー。
店の場所も知らない二人と違ってあたしはその店を知っていた。
ただ、普通のバーだとばかり思ってたけど。

「外泊許可、もらっておけよ?」
「は?なんで」
「集合時間からして門限に間に合わへんのは確定やさかい」
「別に、バレなきゃいいでしょ」
「静留と一緒にいるのに寮の規則破るのはマズいだろ」
「あー、はいはい……って、外泊許可?」
「あぁ。今夜は私の家に泊まるといい」
「はぁっ!?」
「うちも一緒に泊まりますさかい、心配あらへんよ?」
「あんたはいつものことでしょ!っていうか心配な要素しかないわよ!」
「それじゃ、私達は楽器を取りに一度帰るから」
「ちょ、ちょっと!」
「奈緒はんもスティック、忘れずにな?」
「……は?」

たて続けに襲い来る理不尽。
外泊許可はまぁわかったが、スティックの件は意味がわからない。
色んな人のフリーセッションが聴けるからという理由でバーに向かうのに
どうしてあたしがスティックを用意しなければならないのだろう。

「聞いてなかったのか?さっきの」
「悪いけどただの痴話喧嘩かなんかだと思って聞き流してたわ」
「おい」
「まぁまぁ、なつき」
「ごめん、もう一回言ってくれる?」

楽器を持っていくのは演奏目当ての入店だと一目見てわかるようにするため。
藤乃の友人の珠洲城の父(あたしにとっては完全に赤の他人だ)がそれを条件に店主に交渉してくれたらしい。

確かに酒類を提供する店に中学生と高校生が来店することに周囲はいい顔をしないだろう。
藤乃と玖我は辛うじて、大学生ですと言えば済むかもしれない。
ただあたしは論外だ。
成人していると言って差し支えないほど大人っぽい外見をしているだなんて言えないのはわかってる。

「なるほど、わかったわ」
「ほな、またあとでな」
「奈緒」
「何よ」
「…来いよ?」

そんな風に念を押されると逆に行きたくなくなってしまう。
ただ、人のフリーセッションはあたしも興味があったし、
珠洲城の計らいを無碍にするわけにもいかないだろう。
若干大きなお世話な感はあるけど。

行くわよ、行くって言ってるじゃない。
あたしははいはいと返事をして二人に背を向けてそのまま歩き去った。


-


あたしが到着した頃には二人は既に店の前にいた。
律儀にギターとベースを背負って佇むその姿は立派なバンドマンだ。
玖我も藤乃も羨ましいくらいに楽器が似合っていた。
そしてこの夜の街にも。

あたしも玖我のギターを背負って登校した事があるけど、
あんな風に見栄えしていたとはお世辞にも言えなかったと思う。

「早いわね」
「お前が遅刻しないとはな。あと10分くらいは待っているつもりだったのに」
「何アンタ喧嘩売ってんの?」
「二人共、こないに店の前でやめときよし」
「静留もこいつの躾、しっかりしときなさいよ」
「堪忍な」
「謝るな!」

あたしは最近やっと呼び慣れた藤乃の下の名前を呼び注意した。
どっちが飼い主かは明白なんだからこういう言い方をしても問題ないでしょ。

「おい、ちょっと待て」

店に入ろうとした藤乃とあたしを後ろから玖我が呼び止める。
まだ何かあんの?と表情を作りながら振り返ると
玖我が思いの外真面目な顔をしていたのであたしは何も言えなくなってしまった。

「今、静留のこと、静留って呼んだな」
「……だったら何?」

あぁこれは面倒臭い。
玖我が発した言葉を聞いて真っ先にそう思った。
もしかしたら店に入ることは難しいかも知れない。
ちらりと藤乃を見ると何故か楽しげであたしはちょっと苛ついた。

少し迷ったが、玖我が言うよりも先にあたしは弁明することにした。
弁明っていうのもおかしいか、あたし何も悪いことしてないし。

「静留がそう呼べってしつこいから呼んでるだけ。誰もあんたの女を取ろうとなんてしてないっての」
「……は?」
「え、何?違うの?」
「うちはなつきが何を言わはりたいのか理解っとりますえ」

愉快そうな表情はそのままで藤乃が間に入る。
は?何?
理解ってないのはあたしだけっていうこの状況がなんともいたたまれない。

「静留だけズルいだろう!なんで私のことは名前で呼ばない!」
「っはぁ!?」

予想外の発言に素っ頓狂な声をあげてしまう。
何を言ってるんだろう、このラード女は。
いや、きっとあたしはぼんやりと理解していた。
藤乃のことを名前で呼ぶときに”面倒なことになりそう”と躊躇ったのは
頭の何処かでこの展開を予測していたからだと思う。

「だからそれは静留が」
「じゃあ私のことも名前で呼べ。いいな」
「いいなってあんた…」
「うちはよくてなつきはあかんの?あ、もしかして奈緒はん、うちのこと」
「はいはい呼べばいいんでしょ呼べば!」

藤乃がとてつもなく不穏なことを言いそうだったのであたしは折れた。
確かに絶対に断らなければいけない理由なんてないし。
ただ単に今更呼び名を変えるなんて面倒なだけだったから渋ったまでだ。
それに慣れ合うのは以下略。

「そんなところに突っ立ってると置いてくわよ、なつき」

あたしはそう言って振り返って、すぐに店のドアを押した。
扉は全く微動だにせず、もしかしたら防音対策で若干扉が重厚になってるかもしれないと思った。
両手で扉を押し直すあたしを見て、藤乃が何かをこらえるようにこう言った。

「奈緒はん…」
「何よ」
「それ、引かんと開きまへんえ」
「……」

後ろから笑い声が聞こえる。
爆笑しているのは間違いなく玖我だろう。
横を見ると藤乃も口元を手でおさえながら震えている。

なんなの。やめて。
誰にだってあるでしょ、こういうことは。

「いつまで笑ってんのよ!本当に置いてくわよ!」

今度こそ取っ手を引いてドアを開ける。重くもなんともない。
かくしてあたし達は結局10分遅れで入店することとなった。




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