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舞-HiMEの静なつ奈緒のSSを書こうと思っています。 キャラ崩壊酷いと思うので、大丈夫な方だけどうぞ。

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1.

静なつ奈緒がバンド組む話です。
さらっと軽いノリでやってきたいと思います。
静留が奈緒のことを名字じゃなくて名前で呼んでるのは仲が良くなった的なアレです。








「で、あんたらなんでついてくるワケ?」
「私はピックを買いに」
「うちは弦どす」

ぎこちなく振り返ると私の後ろには二人の女がいた。
悪びれる様子もなく、楽器屋の狭い通路を並んで歩いている。邪魔だから今すぐやめて。
認めるのは癪だけど美女と比喩しても差し支えない二人を
引き連れて歩く行為は神経ががりがりと削られた。
どいつもこいつもこっち見過ぎだっつの。
なんなの。

練習が終わって早々にスタジオを立ち去ったはずだった。
後ろにいる二人はそれを見送ったはずだった。
なのにどうしてこうなった。

「二人でずっとあたしの後ろつけてたってワケ?」
「まぁまぁそないなことより、奈緒はんは何しにきはったん?」
「あ、あたしは……」

言うよりも早く、玖我がスティック売り場で足を止める。
自分の用事を把握していられるようで気分が悪い。

「何よ」
「ここじゃないのか」
「……ここだけど」
「やっぱりそうか。奈緒のスティック、ボロボロだと思ったから」

そう。
ささくれだらけのスティックを新調しようとあたしはここに足を運んだ。
鈍いくせに妙に目ざとい。
こいつにそれを感付かれていたというのはどうも面白く無い。

「……あたしの買い物はいいでしょ。あんたら早く自分の見たいとこ見て、買い物済ませて帰れば?」

だからこんな風に刺のある言い方しかできなくても仕方がないだろう。
あたしは今使っているスティックの型式を確認するととりあえず同じものを探した。

「こないにぎょうさん種類あるもんなんどすなぁ」
「あぁ、私も知らなかった」

あぁ、もう黙っててよ。
っていうか早くそれぞれの持ち場(?)に散れ。
青筋を立てながら、ここで口を出したらこいつらの思うがままだと努めて沈黙を貫いた。

「同じのを買うんじゃないのか?」
「……」
「まだ始めたばかりやからねぇ。奈緒はんも手ぇにしっくり馴染むの、色々模索中なんと違います?」
「……」

ふざけるならふざける、真面目に探すなら真面目に探すでハッキリして欲しい。
現にたったいま藤乃が言ったことは正解だった。
まだドラムを初めて間もないあたしにはスティックの良し悪しなんてわからない。
初めてスティックを購入した時だって、違いが分からず店員に勧められるがまま、無難(らしい)ものを買った。

「にしても、たった二ヶ月でこんなにボロボロにするなんて、案外扱いが荒いんだな」
「あんたらがスタジオでイチャつかなければもうちょっと物持ちいいわよ」
「んな!だ、誰がいつイチャついた!誰が!」
「誰って、うちとなつきやろ?」
「そうよ。バカップル。シンバルしばくのが捗るったらありゃしないわ」
「シ、シンバルはしばくものじゃないぞ!っていうかバカップルじゃない!!」

顔を真っ赤にしながら吠える玖我を他所に、棚からスティックを出しては重さや振り心地を確かめた。
まともに相手するつもりはさらさらない。
こいつらがあたしから離れる気がないなら自分の買い物をとっとと終わらせて帰路につくだけだ。

「自分に合うもん選ぶんも難儀やなぁ。うちにはどれも一緒に見えますさかい」
「……確かにな。奈緒、違いが分かるのか?」
「知らないわよ。ただ、触ればあんた達にだって太さや重さの違いくらい分かると思うけど」

言いながらまた一振りして新品のそれを棚に戻す。
さっきも言ったけど、あたしにだってどれが自分に合っているものなのかなんてわからない。
心にあるのは違うものを試してみたいという好奇心だけだ。

「奈緒はんは選り好みが激しおすなぁ」
「好き嫌いしてると大きくなれないぞ?」
「食べ物じゃないんだから!!」

後ろから聞こえてくる見当違いの心配に声だけで反応する。
もういい。
居た堪れなくなってセットになっているスティックを適当に掴んだその時だった。

「あ、これなんかええんと違います?」

藤乃が言い放った言葉は、あたしの気を引くのに十分なものだった。

「あぁ。奈緒にピッタリだ」

玖我が同調するように言う。
仕方ない。
これといったものが決まらなかったのだ。
二人の提案を甘んじて受けようと、あたしは藤乃の手に握られているそれに視線を向けた。

「じゃあもうそれでいいわよ……って、そんなので叩けるワケないでしょ!ふざけないで!」

藤乃が持っていたのは太鼓用のバチだった。
そんなので叩いたら穴が空くじゃない。
っていうかそもそもそういう問題じゃない。

こいつら、絶対おちょくってる。
結局、今まで使っていたものと同じものを引っ掴んで、あたしは逃げるように会計に向かった。




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