大学生パロ(?)
避けに避けまくってた静留視点です。
違います、避けていたのは、静留の心理描写をしてしまうと確信をつき過ぎてしまうからです。
嘘です。そんな高尚なこと考えて書いていません。
風呂場で汗を流しているであろうなつきに想いを馳せながら食器を片す。
無駄な動作はしない。無駄だから。
やけどここ数ヶ月のうちは無駄ばかりや。
なつきはかわいい。
例え自分を差し置いてオイタ遊びをしていても、それをやめる気がなかったとしても。
バレてないと思っているところが可愛くてたまらない。
気付くに決まってる。この手のことに関して自分となつき、どちらが上手なのかは明白だ。
「はぁ……。」
昔の自分なら迷わず問い詰めていただろう。
今だってそうしたい気持ちが無いと言えば嘘になる。
しかし、なつきと暮らすようになって、毎日のように寝食を共にして気付いたことがある。
それはなつきにとって、自分はかけがえのない存在であるということ。
自惚れなんかじゃない。
その確信を胸に私はなつきの行動の真意を知るべく沈黙を貫いた。
自分に何が足りなかったのか、そればかりが気がかりだった。
問題はその相手が結城奈緒だということ。
その事実に気付いたとき、危機感が増して焦燥感がじりじりと自分を追いつめた。
阿呆みたいや。
そうは思うものの、口出しをすることも忘れてしまうことも、そのどちらもできなかった。
奈緒から言い寄った可能性だって考えられた。
何処かの誰かに必死なぶぶ漬け女と指をさして笑われても構わない。
それでも自分はなつきを許す材料がないか探してまう。
百の罪があったとしても、一つの理由さえあればきっとそれで十分だ。
気を紛らわせる為につけたテレビの内容は当然ながら頭には入らない。
バラエティの気分ではなかったので、チャンネルを回し、適当なニュース番組で止めてみる。
しかしタイミングの悪いことに芸能ニュースのコーナーの最中だった。
主演映画の会見だというのに、映画の内容なんてそっちのけで
交際が噂されている女優とのことばかりを矢継ぎ早に質問される人気俳優を気の毒に思った。
こんな風に、相手の気持ちなどお構いなしに訊きたいことだけ訊ければ楽なのかもしれない。
どうしてこの状況でなつきに問い詰めないのか、と言う人もいると思う。
でもそんなん愚問や。
うちはなつきと居れればそれでええ。
面倒なことを口にしてまえば全てが終わるかも知れないというのに。
「……。」
いや、きっと終わるやろ。
あの子は優しい子やから。
阿呆みたいな矛盾に笑ってしまうけど、でもきっとそうだ。
真実を突きつけてしまえば「いくら静留が許してくれると言っても、それでも今まで通り静留と一緒にいるなんて、私にはできない」とかなんとか言ってこれまた矛盾した真っ直ぐさでいとも簡単に自分との縁を切るはずだ。
流し場と風呂場。
今この部屋には水音しかしない。
それは静寂を辛うじて破っているというよりかは、むしろ強調していた。
耳の奥に響くのは聞いたことも聞きたくもない、なつきと奈緒の行為の水音。
「やかましいわ……。」
ええんよ。
うちはなつきが打ち明けるまで待ちますさかい。
もちろん、奈緒に何もしないということは保証できないが。
これくらいは許されるだろう。
今のところ、自分は完璧な被害者なのだから。
「なんや洗い物いう気分やなくなってしもた。」
早々に洗い物を切り上げて風呂場に向かう。
なつきにちょっかいをかけようとしただけだった。
何の気なしに籠から落ちていたジーンズを拾うまでは。
「……あきまへんて。」
ポケットの違和感に気付いて探ってみるとそこから出てきたのは袋に入ったコンドームだった。
この袋はおそらくホテルの包装だろう。
なるほど、今日も帰ってくる前に遊んできたということか。
「あんまりおちょくってると、痛い目見ますえ?」
呟きはシャワーの音にかき消された。
奈緒の顔が頭を過ったと思ったら、いつの間にか手のひらの中でその袋を握り潰していた。
くしゃくしゃになった袋を自らの服のポケットにしまうと一つため息を吐く。
感情のコントロールはなかなかに難しい。
でもまだやれるやろ。うちならイケる筈や。
「まぁ、ええわ。しばらく水槽の中泳いどきよし。」
うちが気付いてるいうのも想定外のことやろうけど、それ以上の誤算がなつきにはありますえ。
結城はんはあんたの味方なんかやあらへん。絶対に。